特定の財産を特定の人物に遺したい!「特定遺贈」の活用

特定遺贈とは?

「遺贈(いぞう)」とは遺言によって自分の財産を誰かに譲ることです。その中でも「特定遺贈」は特定の財産を特定の相手に譲る方法です。

簡単に言うと、「この不動産は長男に、この預金は妻に」というように、個別の財産と受け取る人を指定する遺贈のことです。

これに対して、「包括遺贈」というものもあります。これは「財産の半分を妻に、残りを子どもたちに」といったように、財産の割合だけを指定する方法です。

特定遺贈は、自分が「この財産をこの人に」という強い希望がある場合に有効な方法です。


特定遺贈の方法

特定遺贈をするには、必ず「遺言書」を作成する必要があります。

遺言書には、「自筆証書遺言」と「公正証書遺言」の2つの主な種類があります。

  • 自筆証書遺言:自分で書く遺言書です。手軽ですが、書き方に不備があると無効になったり、家庭裁判所の「検認(けんにん)」という手続きが必要になったりします。
  • 公正証書遺言:公証役場で公証人に作成してもらう遺言書です。費用はかかりますが、内容が明確で、手続きもスムーズに進みます。特定遺贈をするなら後々のトラブルを防ぐためにも公正証書遺言をおすすめします。

遺言書には、以下の内容を明確に記載します。

  • 誰に」:受遺者(財産を受け取る人)の名前と生年月日、住所を正確に書きます。
  • 何を」:遺贈する財産を具体的に特定します。
    • 不動産の場合:土地の所在地、地番、家屋番号など、登記簿謄本に記載されている情報を正確に書きます。
    • 預貯金の場合:金融機関名、支店名、口座番号、種類(普通・定期)などを正確に書きます。

特定遺贈の注意点

特定遺贈は便利な方法ですがいくつか注意点があります。

1. 遺留分(いりゅうぶん)を侵害しないように

遺留分とは、亡くなった方の兄弟姉妹以外の相続人(配偶者や子どもなど)に最低限保障されている遺産の取り分です。

特定遺贈によって特定の相続人に多くの財産を遺贈すると他の相続人の遺留分が侵害されてしまう可能性があります。その場合、遺留分を侵害された相続人は財産を受け取った人に対して「遺留分侵害額請求」をすることができトラブルの原因になってしまいます。

遺留分を考慮しつつ遺言書の内容を検討することが大切です。

2. 相続人以外への遺贈は「登記」が必要

遺言で不動産を譲る相手が相続人ではない場合、その不動産の所有権を移転するために、法務局で「所有権移転登記」の手続きが必要になります。

この手続きは、遺言執行者(いごんしっこうしゃ)が代行することもできます。遺言執行者とは遺言書の内容を実現する人のことです。トラブルなく手続きを進めるためにも遺言執行者を指定しておくことをおすすめします。

3. 遺言の内容と現実が異ならないように

遺言書を作成した後に不動産を売却してしまったり預金を解約してしまったりするとその遺贈は無効になります。

遺言書の内容は常に最新の状態にしておくことが重要です。定期的に見直す習慣をつけましょう。

4. 誰にでも遺贈できる

特定遺贈は、相続人だけでなく、内縁の妻や孫、お世話になった友人など、誰にでも財産を譲ることができます。

ただし、相続人以外への遺贈の場合、受け取った人には「相続税」がかかります。相続税の計算には生命保険や医療保険も関わってきます。

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