遺言書でペットの世話を託す方法:負担付き遺贈の活用
一番確実で、法的に効力のある方法は「負担付き遺贈」という仕組みを利用することです。
1. 負担付き遺贈とは?
これは、「財産をあげる代わりに、何か義務を負ってくださいね」という条件を付けた遺贈のことです。
例えば、「私の預貯金から500万円を長男に渡します。ただし、その代わりに私の飼っている愛犬のポチの世話を一生涯面倒見てください」といった内容を遺言書に記載します。
この場合、
- 財産をもらう人(受遺者): 長男
- もらう財産: 預貯金500万円
- 負う負担(義務): ポチのお世話
となります。長男は、500万円を受け取る代わりに、ポチのお世話をするという義務を負うことになります。
2. 遺言書にどう書けばいいの?
具体的な書き方には、いくつかのポイントがあります。
【記載例】
「私は、遺言者の全財産のうち、以下の財産を長男〇〇に遺贈する。
- 土地:〇〇市〇〇町1丁目2番3号
- 建物:〇〇市〇〇町1丁目2番3号所在の家屋
- 預貯金:〇〇銀行〇〇支店の口座(口座番号〇〇)にある金銭すべて
ただし、この遺贈は、以下の負担を条件とする。
- 遺言者の飼育する愛犬ポチの終身にわたる飼育(食事、散歩、健康管理、医療費負担等を含む)を行うこと。
- 上記負担の履行を確実なものとするため、遺贈を受けた〇〇は、愛犬ポチの飼育状況について、定期的に遺言執行者である〇〇に報告すること。」
ポイントは、「誰に」「何を」「どんな条件で」という点を明確に書くことです。特に負担の内容は具体的に書いておきましょう。医療費なども含めるのか、といった詳細を記載しておくことが大切です。
3. 負担付き遺贈の注意点
とても便利な仕組みですが、いくつか注意点があります。
① 負担を強制できない場合がある 負担付き遺贈は、受遺者(財産をもらう人)が「その負担は嫌です」と放棄することができてしまいます。もし、長男が「ポチの世話は無理だから、500万円もいらない」と拒否すれば、遺贈は成立しません。
② 負担が守られなかったら? もし、受遺者が遺産だけ受け取って負担を履行しなかった場合どうなるのでしょうか? この場合、相続人(ご主人や他のご兄弟など)や遺言執行者は、受遺者に対して負担の履行を請求することができます。さらに、家庭裁判所に対して遺言の取り消しを請求することも可能です。 しかし、現実的には法的な手続きが必要になり時間も手間もかかります。
③ 負担の確認者を決めておく 遺言執行者を指定しておき、その方に「ペットの飼育状況を確認する」という任務を与えておくことで、受遺者に「ちゃんと見張られている」という意識を持たせることができます。これにより負担が守られる可能性が高まります。
その他の方法
負担付き遺贈以外にもペットちゃんのためにお金を遺す方法があります。
1. 信託銀行等の「ペット信託」を利用する ご自身の財産を信託銀行などに預け、ペットのお世話をしてくれる方に対して、そこからお金を支払ってもらう仕組みです。専門の会社に依頼するため、費用はかかりますがより確実にペットの世話を託すことができます。
2. 任意後見契約を結ぶ 将来、ご自身が認知症などで判断能力を失ったときに備えて、信頼できる人に財産の管理や身上看護を任せる契約です。これと合わせて「死後事務委任契約」を結び、ご自身の死後のペットの世話もお願いすることができます。
まとめ
生前分与や遺言書といった相続の準備は「もしも」の時に大切な家族を守るためのご自身からの最後の愛情表現です。
- 遺言書でペットを託すなら「負担付き遺贈」がおすすめ
- 遺言書には「誰に」「何を」「どんな条件で」を具体的に書く
- 遺言執行者を指定しペットの状況確認を任せておくと安心