デジタル遺産を遺言書で指定する方法
遺言書でデジタル遺産を扱う場合、大切なのは、「誰に、何を、どうしてほしいか」を明確にすることです。
1. デジタル遺産の一覧表を作る
まず最初にご自身が持っているデジタル資産をすべて書き出してみましょう。
- オンラインアカウント: ネット銀行、オンライン証券、クレジットカード、ショッピングサイト(Amazon、楽天など)
- SNS: Facebook、X(旧Twitter)、Instagram、LINE
- クラウドサービス: Google Drive、iCloud、Dropbox
- その他: 電子メール、電子書籍、ゲームのアカウント、仮想通貨、ブログ、ウェブサイト
ポイント: サービス名、ID、パスワード、登録メールアドレスなどを、ノートやExcelなどで一覧にしておくとご家族が助かります。遺言書にはこの一覧表を「遺言書と一体のものとして」指定することができます。
2. 各サービスごとの「希望」を明確にする
それぞれのデジタル資産を相続する方にどうしてほしいかを具体的に書きます。
例1:SNSのアカウント
- 「私のFacebookアカウント(ID: ○○)は、私の死後、〇〇(長男・妻など)に管理を任せ、追悼アカウントとして残してほしい。」
- 「私のXアカウント(ID: △△)は、私の死後、すべてのデータを削除してほしい。」
例2:ネット銀行、オンライン証券
- 「私のネット銀行(〇〇銀行、口座番号: ○○)の預金は、〇〇(妻)に相続させる。」
- 「私のオンライン証券(△△証券、口座番号: △△)の株式は、〇〇(長女)に相続させる。」
例3:電子書籍、ゲームのデータ
- 「私の電子書籍(〇〇サービス)の購入データは、〇〇(長男)に引き継ぐように依頼する。」
- 注意点: サービスによっては、利用規約で譲渡が禁止されている場合があります。相続人への引き継ぎが難しい場合は、「アカウントを閉鎖してほしい」と指示することもできます。
3. 誰に手続きを任せるか、明確に指定する
デジタル遺産の整理や削除はご家族にとって初めてのことで大変な負担になります。そこで、誰にその役割を任せるかを具体的に指定しておきましょう。
- 「私のデジタル遺産に関する整理・削除は、〇〇(長男)に任せる。」
- 「遺言執行者として、弁護士の〇〇氏に私のデジタル遺産に関するすべての手続きを依頼する。」
デジタル遺産を遺言書に書く上での注意点
遺言書に書く上でいくつか注意すべきことがあります。
1. パスワードなどの個人情報は、遺言書に直接書かない!
遺言書は公的な手続きで利用される重要な書類です。パスワードやIDなどを直接書いてしまうと情報漏洩のリスクがあります。
おすすめの方法: 遺言書とは別にパスワードなどを記載した「エンディングノート」を作成し、「私のデジタル遺産に関するパスワードは、別紙のエンディングノートに記載している。このノートは、私の死後、〇〇(長男)に開示すること。」のように遺言書でエンディングノートの存在と開示を指示しましょう。
2. 各サービスの利用規約を確認する
多くのオンラインサービスではアカウントの譲渡や相続が利用規約で禁止されています。例えば、LINEのスタンプやゲームのアイテムは原則として相続できません。
遺言書で「譲渡」を指示しても、サービス提供者が応じてくれないこともあります。そのため、「譲渡を希望するが、困難な場合はアカウントを閉鎖する」といったように第二の選択肢も書いておくと安心です。
3. 遺言執行者を指定する
遺言執行者とは遺言書の内容を実現する人のことです。ご家族に代わって、銀行や証券会社、各種オンラインサービスへの連絡、アカウントの閉鎖手続きなどを行ってくれます。
デジタル遺産は手続きが複雑なため、遺言執行者を指定しておくとご家族の負担を大きく減らすことができます。信頼できるご家族や弁護士などの専門家を指定しておくと良いでしょう。
まとめ
デジタル遺産は、遺言書に書かないとご家族がどうすればいいか分からず、困ってしまうことがほとんどです。
- デジタル遺産の一覧表を作成する。
- 各サービスごとにどうしてほしいかを具体的に書く。
- パスワードなどの個人情報は遺言書とは別のノートに書いておく。
- 利用規約も確認しておく。
- 手続きを任せる「遺言執行者」を指定する。