公正証書遺言とは?
「公正証書遺言」と聞くと、なんだか難しそうに聞こえるかもしれませんが、簡単に言うと「国のお墨付きをもらった、一番安心できる遺言書」のことです。
自分で書く遺言書(自筆証書遺言)と違って、公証役場という場所で公証人という法律の専門家があなたの話を聞いて代わりに書いてくれます。証人という第三者が立ち会ってくれるので、後から「本当に本人が書いたの?」と揉める心配がほとんどありません。
ですから、「せっかく遺言書を作ったのに、家族が揉めてしまったら…」とご心配の方には、この公正証書遺言を強くおすすめします。
公正証書遺言の作成手順:5つのステップ
ステップ1:事前の準備(一番大切!)
まず、公証役場に行く前に、次の3つのことをじっくり考えてみましょう。
- 誰に何を遺すか?
- 「長男に自宅を、長女に預貯金を」といったように、具体的に誰に、どの財産を遺したいかをメモしておきましょう。
- 遺産のリスト(不動産、預貯金、株式など)をできるだけ正確にまとめておくと、公証人との話がスムーズです。
- 誰を証人にするか?
- 公正証書遺言には、あなた以外に「証人」が2人必要です。
- 証人は、あなたの財産を相続する予定の人や、そのご家族(配偶者、直系血族など)はなれません。
- もし適当な人が見つからない場合は、公証役場に頼んで紹介してもらうこともできます。その場合、日当として1人あたり6,000円~1万円程度の費用がかかるのが一般的です。
- どこの公証役場に行くか?
- あなたの住んでいる場所に関係なくどこの公証役場でも作成できます。
- ご自宅や病院で作成したい場合は公証人に来てもらうこともできます(その場合は費用が少し高くなります)。
ステップ2:公証役場への連絡・予約
準備ができたら、公証役場に電話で連絡しましょう。
- 「公正証書遺言を作成したいのですが」と伝えれば、担当の公証人につながります。
- このときに、用意すべき書類や、希望する作成日時を相談します。
ステップ3:必要書類の準備
公証人から指示された書類を揃えます。一般的に必要な書類は以下の通りです。
書類名 | 内容 | 取得場所 |
あなたの本人確認書類 | 印鑑証明書と実印、または運転免許証(マイナンバーカード)と認印 | 役所(印鑑証明書) |
あなたの戸籍謄本 | あなたの身分を証明するもの | 役所 |
相続人の戸籍謄本 | 誰に遺産を相続させるかを証明するもの | 役所 |
財産に関する書類 | 不動産の登記簿謄本や固定資産評価証明書、預金通帳のコピーなど | 法務局、役所、金融機関など |
証人の情報 | 証人の氏名、住所、生年月日、職業を記したメモ | ― |
※状況によって必要な書類は変わることがありますので、必ず公証人の指示に従ってください。
ステップ4:公証人との事前打ち合わせ
公証役場へ行き、公証人と直接、遺言の内容について話し合います。
- 準備してきたメモや財産リストを見せながら、あなたの想いをじっくり伝えてください。
- 公証人があなたの意図を正確に汲み取り、法律的に間違いのない文章(遺言書案)を作成してくれます。
- この打ち合わせは、電話や郵送で行うことも可能です。
ステップ5:遺言書作成当日
予約した日時に、あなたと2人の証人が公証役場へ行きます。
- 公証人による遺言書の読み上げ
- 公証人が作成した遺言書案を声に出して読み上げてくれます。
- 内容に間違いがないか、あなたの意図通りか、よく確認しましょう。
- 署名・押印
- 内容に間違いがなければ、証人2人、公証人の全員が署名し、押印します。
- これで正式な「公正証書遺言」が完成です。
- 遺言書の交付
- 遺言書の「原本」は公証役場で大切に保管されます。
- あなたには「正本」と「謄本」というコピーが渡されますので、大切に保管してください。
費用はどのくらい?
費用は、遺産の総額や、相続させる人の数によって変わります。
遺産の価額 | 手数料 |
100万円以下 | 5,000円 |
100万円~500万円 | 11,000円 |
500万円~1,000万円 | 17,000円 |
1,000万円~3,000万円 | 23,000円 |
3,000万円~5,000万円 | 29,000円 |
※これは基本的な手数料です。
※遺産を複数の人に分ける場合は、その人ごとに金額を計算し、合計する方式になります。
※証人を公証役場に頼んだり、出張をお願いしたりする場合は、追加の費用がかかります。
公正証書遺言のメリット:なぜ安心なの?
- 安心・安全!法律の専門家が作成
- 公証人が法律に基づいて作成してくれるので、書き方に不備があって無効になる心配がありません。
- 紛失・偽造の心配なし!
- 原本は公証役場で厳重に保管されるため、紛失したり、誰かに勝手に書き換えられたりすることがありません。
- 手続きがスムーズ!
- 遺言書の内容に「検認」という家庭裁判所での手続きが必要ありません。相続開始後、すぐに手続きを進められます。
- 公正証書遺言があれば、相続人全員の印鑑証明書がなくても、銀行の預金解約や不動産の名義変更がスムーズに進みます。
いかがでしたでしょうか。 「公正証書遺言」は、あなたとご家族の未来を守るための、とても大切なツールです。もし「もっと詳しく知りたい」「うちの場合はどうなるの?」といったご質問があれば、いつでもお気軽にご相談ください。