自筆証書遺言の作成方法!法的要件と注意点

自筆証書遺言は、読んで字のごとく「自分で書く遺言」のことです。特別な手続きが不要なので気軽に作成できるのが大きなメリットです。

1. 法的な要件(日付、署名、押印)

この3つが揃っていないとせっかく書いた遺言が無効になってしまうのでとても重要です。

  • 日付:
    • 「いつ書いたか」をはっきりさせるためのものです。 必ず、遺言を「作成した日」を正確に書きましょう。
    • 例:「令和7年8月7日」 のように、年、月、日を正確に記載します。「令和7年8月吉日」のような書き方は無効になってしまうので注意してください。
    • もし、同じ人が複数の遺言書を作成していた場合、一番新しい日付のものが有効になります。
  • 署名:
    • 「誰が書いたか」を明らかにするためのものです。 必ず遺言を書いた人(遺言者)が自分の名前をフルネームで自筆で書く必要があります。
    • 例:「山田花子」
    • ゴム印や他人に書いてもらったものは無効です。必ずご本人が手書きで書いてください。
  • 押印:
    • 「本人の意思で作成したこと」を示すものです。 署名に続けてご本人の印鑑を押してください。
    • 認印でも問題ありません が、実印を押しておくとより本人の意思を証明しやすくなります。シャチハタは避けた方が無難でしょう。

2. 内容の書き方

遺言の内容は、ご自身の財産をどう分けるか、誰に何をあげたいかなど自由に書くことができます。

いくつかポイントをご紹介します。

  • 全文自筆で:
    • パソコンで作成したり他人に書いてもらったりしたものは無効です。 必ず、ご自身の手書きで全文を書いてください。
    • ※2019年の法改正で、財産目録についてはパソコンでの作成や通帳のコピーを添付することが可能になりました。しかし、その場合でも、目録の全てのページ署名・押印が必要です。慣れないうちは、全て手書きで書いた方が確実で安心です。
  • 誰に何を渡すか具体的に:
    • 「長男の太郎に、〇〇銀行〇〇支店の普通預金口座(口座番号〇〇〇)にある預金全てを相続させる。」 のように、誰に、どの財産を、どのくらい渡すのかを、できるだけ具体的に書きましょう。
    • 「長男に全財産を」のように書いてしまうと、後々、財産の種類や範囲で争いになる可能性があるので注意が必要です。
  • 「相続させる」という言葉を使う:
    • 法的な効力を生じさせるために、「〇〇を相続させる」 という言葉を使うのが一般的です。「〇〇を長男にあげる」といった表現でも有効になる場合もありますが、より確実なのは「相続させる」という表現です。
  • 付言事項も有効活用:
    • 遺言書の最後に、「家族への感謝の気持ち」や「遺言の趣旨」 などを自由に書くことができます。
    • これは法的な効力はありませんが、ご家族が遺言の意図を理解する助けになり無用な争いを防ぐ効果が期待できます。

3. 保管方法

せっかく書いた遺言書も、紛失したり、発見されなかったりすると意味がありません。

  • 遺言書は、鍵のかかる引き出しや金庫など安全な場所に保管しましょう。
  • ご家族に「遺言書を書いたこと」と「保管場所」を伝えておくと見つけてもらいやすくなります。
  • もし遺言を書き換える可能性がある場合は見つけてもらいやすい場所に保管しておくと、家族に勝手に開けられてしまう危険もあるので、慎重に判断してください。

【新しい保管方法:法務局の保管制度】

  • 2020年7月から、法務局で自筆証書遺言を預かってくれる「自筆証書遺言書保管制度」 が始まりました。
  • この制度を利用すれば、紛失や偽造、隠匿の心配がなくなります。 また、検認手続きも不要になるのでとても便利で安心です。
  • 遺言書を作成したら法務局に保管の申請をすることができますのでぜひ検討してみてください。

4. 検認手続き

自筆証書遺言は、遺言者が亡くなった後家庭裁判所で「検認(けんにん)」という手続き が必要になります。

  • 検認とは?
    • 遺言書が「いつ、どのような状態で存在していたか」を相続人全員に確認させる手続きのことです。
    • この手続きは遺言書の内容の有効性を判断するものではありません。あくまで、遺言書の状態を保全し偽造や変造を防ぐためのものです。
  • 手続きの流れ
    1. 遺言書を発見した人は勝手に開封せずに家庭裁判所に提出します。
    2. 家庭裁判所で相続人全員を呼び出し遺言書を全員の前で開封します。
    3. 家庭裁判所が遺言書の内容を記録し「検認済証明書」 を発行します。
    4. この証明書がないと銀行での預金の払い戻しや不動産の相続登記ができません。

【注意点】

  • もし検認手続きをせずに勝手に遺言書を開封してしまった場合、5万円以下の過料(罰金)が科されることがありますので絶対にやめましょう。

もし、ご自身で作成するのが不安な場合は、法務局の保管制度の利用も検討したり、専門家(弁護士、司法書士など)に相談したりするのも一つの方法です。

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