相続税で損しないための不動産評価のポイント

不動産の相続税評価って?

相続が発生した時に、故人さまが持っていた不動産も相続財産として数えられます。そして、その不動産にどれくらいの価値があるのかを計算するのが「相続税評価」です。この評価額に基づいて、相続税が計算されます。

「でも不動産の値段って、売りに出す時と相続の時で違うの?」と思われるかもしれませんが、相続税を計算するための評価額は、実際に売買される価格とは異なる独自のルールで計算されます。

路線価と固定資産税評価額の関係

不動産の相続税評価には、主に路線価(ろせんか)と固定資産税評価額(こていしさんぜいひょうかがく)という2つの基準が使われます。

1. 路線価(ろせんか)

路線価は、道路に面している土地の1平方メートルあたりの評価額のことです。毎年、国税庁が発表しています。道路ごとに「この道路に面している土地は1平方メートルあたり〇〇円」という形で示されています。

この路線価は、公示地価(国が発表する土地の標準的な価格)の約8割を目安に決められています。相続税や贈与税を計算する時に使われるのが一般的です。

例えば、皆さんの家が面している道路に「200C」と書かれていたら、それは「1平方メートルあたり20万円」という意味で、Cは「借地権割合」というものを示しています。

2. 固定資産税評価額

固定資産税評価額は、皆さんが毎年払っている固定資産税や都市計画税を計算するための基準となる評価額です。これは、各市町村が定めていて、3年に一度見直されます。

路線価が公示地価の約8割なのに対して、固定資産税評価額は公示地価の約7割を目安に決められています。ですので、一般的には固定資産税評価額の方が路線価よりも低いことが多いです。

不動産の評価方法(土地と建物)

土地の評価方法

土地の評価は、原則として路線価方式という方法で行われます。

  1. 路線価の確認:まず、皆さんの土地が面している道路の路線価を確認します。これは国税庁のホームページで「路線価図」というものを見れば調べられます。
  2. 奥行価格補正:道路に面している土地でも、奥行きが長すぎたり短すぎたりすると、使い勝手が悪くなったり良くなったりします。その土地の奥行きに応じて、路線価を補正する「奥行価格補正」という計算をします。
  3. 形状や利用状況による補正:土地が不整形な形をしていたり、崖地になっていたり、逆に角地で価値が高かったりする場合など、さまざまな状況に応じて評価額を調整します。
  4. 計算:これらの補正を行った路線価に、土地の面積を掛けて、最終的な評価額を算出します。

もし、皆さんの土地がある地域に路線価が定められていない場合は、「倍率方式」という方法で評価します。これは、固定資産税評価額に一定の倍率を掛けて計算する方法です。この倍率は、国税庁のホームページで調べることができます。

建物の評価方法

建物の相続税評価額は、原則として固定資産税評価額と同じになります。

皆さんのご自宅に毎年送られてくる「固定資産税の納税通知書」に、建物の固定資産税評価額が記載されていますので、そちらの金額がそのまま相続税評価額になります。

ただし、賃貸マンションなどのように、建物を誰かに貸している場合は、その貸している割合に応じて評価額が下がる特例があります。これを「貸家建付地評価」や「貸家評価」と言います。

評価額を抑えるポイント

1. 小規模宅地等の特例を利用する

亡くなった方が住んでいた土地や、事業をしていた土地など、一定の条件を満たす宅地については、評価額を最大80%減額できる「小規模宅地等の特例」という制度があります。

例えば、お父さんが住んでいた土地(330平方メートルまで)を同居していたお子さんが相続する場合など、この特例を使うと評価額が下がることがあります。

この特例は適用要件が細かく決まっているので、ご自身で判断せずに必ず専門家(税理士など)に相談するようにしてください。

2. 広大地評価(現在は「地積規模の大きな宅地の評価」)

以前は「広大地評価」という特例がありましたが、今は「地積規模の大きな宅地の評価」という名前になっています。

都市計画区域内にある一定の面積以上の大きな宅地で開発が前提となるような土地の場合、その土地を分割して宅地として利用する際に道路などの公共用地として提供する部分があることなどを考慮して評価額を減額できる制度です。

これも、適用できるケースが限られており、計算も複雑なので、専門家への相談が必須です。

3. 不整形地や高低差がある土地の評価

先ほど少し触れましたが、土地の形がいびつだったり、周りの土地と比べて高低差があったり、道路に面していない「がけ地」のような土地は一般的に利用しにくいですよね。

そういった土地は通常の整形な土地よりも評価額が低くなるように調整されます。このような補正を適切に行うことで評価額を下げることができます。

4. 造成費を考慮する

もし、相続した土地が、そのままでは建物が建てられないような状況(例えば、がれきが残っている、高低差が大きすぎるなど)で、建物を建てるために多額の造成費用がかかる場合、その造成費用を評価額から差し引ける場合があります。

5. 共有名義にする

これは相続後の対策というよりは生前の対策になりますが、もしご夫婦で不動産を購入される場合など、共有名義にしておくことで将来の相続時に一人当たりの相続財産を減らす効果が期待できます。

6. 賃貸物件として活用する

アパートやマンションなどの賃貸物件として活用されている土地や建物は、そうでないものと比べて評価額が下がります。これは、借主がいることですぐに自由に売却したり利用したりできない制約があるためです。

土地は「貸家建付地」、建物は「貸家」として評価され、それぞれ一定の割合が減額されます。

まとめ

不動産の相続税評価は、路線価や固定資産税評価額を基準に、その土地や建物の状況に応じて様々な補正を加えて計算されます。

特に、小規模宅地等の特例や土地の形状による補正などは、評価額に大きく影響を与える可能性があります。

ご自身で全てを判断しようとすると、見落としてしまう特例や難しい計算が必要になることもあります。

一番大切なのは相続が始まる前から準備を進め、専門家(税理士や不動産鑑定士)に相談することです。

相続税の申告は、相続開始後10ヶ月以内に行う必要があります。期限までに正確な評価と申告をするためにも、早めに専門家のアドバイスを受けることを強くお勧めします。

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