死亡退職金にも相続税がかかる?非課税枠と計算方法

死亡退職金って何?

まず、ご主人が会社にお勤めされていた場合、もしもの時に会社から「死亡退職金」が支払われることがあります。これは、長年の功労に報いる意味合いと、残されたご家族の生活を支えるためのものと考えてください。

この死亡退職金は、ご主人が生きていれば受け取るはずだった退職金と少し扱いが違います。

死亡退職金の非課税枠

死亡退職金は、ご家族の生活を保障するためのものなので、相続税がかからない「非課税枠」というものが設けられています。これは、税金がかからない特別な枠だと思ってください。

非課税枠の計算方法

死亡退職金の非課税枠は、次の計算式で求められます。

500万円 × 法定相続人の数

例えば、ご主人が亡くなられて、奥様(配偶者)とお子さん2人が相続人だった場合、法定相続人は3人になりますよね。この場合、

500万円 × 3人 = 1,500万円

となります。つまり、死亡退職金が1,500万円までなら、相続税はかからないということです。

ポイント!

  • 法定相続人とは?:民法で定められた相続人のことです。基本的には配偶者、お子さん、お子さんがいなければご主人のご両親、ご両親もいなければご主人のご兄弟・姉妹、という順番になります。
  • 相続放棄してもカウントされる?:もし、お子さんの一人が相続放棄をしたとしても、この非課税枠を計算する上では、その方も法定相続人の数に含めて計算します。
  • 生命保険の非課税枠とは別!:生命保険金にも非課税枠がありますが、死亡退職金の非課税枠はそれとは別に使うことができます。両方に非課税枠があるのは、とても助かりますよね。
  • 「みなし相続財産」って?:死亡退職金は、厳密にはご主人の財産ではなかったけれど、相続税を計算するときには、ご主人が残した財産と同じように扱う「みなし相続財産」として扱われます。ただし、ご主人が亡くなってから3年以内に支給が確定したものが対象です。

相続税の計算方法(死亡退職金が絡む場合)

死亡退職金が非課税枠を超えた場合は、その超えた部分が他の相続財産と一緒に相続税の対象となります。

相続税の計算は以下のようになります。

  1. ご主人の財産を全て洗い出す:預貯金、不動産、株式など、ご主人が持っていたプラスの財産を全てリストアップします。そして、借金などのマイナスの財産も確認します。
  2. 死亡退職金の課税対象額を計算する
    • 受け取った死亡退職金から、先ほどの非課税枠を差し引きます。
    • 例えば、死亡退職金が2,000万円で、非課税枠が1,500万円だった場合、 2,000万円 – 1,500万円 = 500万円 この500万円が課税対象となる死亡退職金になります。
    • もし、相続人が複数いて、それぞれが死亡退職金を受け取った場合は、非課税枠を各相続人が受け取った金額に応じて按分(割合で分ける)して計算します。
  3. 相続財産の合計額を出す:洗い出したプラスの財産に、非課税枠を超えた死亡退職金を加えます。そこから、マイナスの財産や葬儀費用などを差し引いたものが「正味の遺産総額」となります。
  4. 相続税の基礎控除額を計算する:相続税には、「基礎控除」というものがあり、この金額までは相続税がかかりません。
    • 基礎控除額 = 3,000万円 + (600万円 × 法定相続人の数)
    • 例えば、法定相続人が3人の場合、 3,000万円 + (600万円 × 3人) = 3,000万円 + 1,800万円 = 4,800万円 となり、4,800万円までは相続税がかからないことになります。
  5. 相続税の課税遺産総額を計算する
    • 「正味の遺産総額」が「基礎控除額」を超えた場合、その超えた部分に相続税がかかります。
    • 課税遺産総額 = 正味の遺産総額 - 基礎控除額
  6. 相続税額を計算する:課税遺産総額を、法定相続人が法律で決められた割合(法定相続分)で分けたと仮定して、それぞれの相続分に応じた税率をかけて相続税の総額を計算します。
  7. 各相続人の相続税額を計算する:計算した相続税の総額を、実際に財産を相続した割合に応じて、各相続人が負担する相続税額を計算します。

遺族年金と死亡退職金の違い

死亡退職金とよく混同されるのが「遺族年金」です。この二つは全く性質の違うものなので混同しないようにしましょう。

項目死亡退職金遺族年金
支給元会社(ご主人の勤務先)国(年金機構)
目的功労への報償と残された家族の生活保障遺族の生活保障
税金相続税の対象(非課税枠あり)原則として非課税(所得税も相続税もかからない)
受取人会社の規定による(多くは配偶者や子)法律で定められた遺族(配偶者、子など)
支給形態一時金(一括で受け取るお金)年金(毎月や隔月で受け取るお金)
遺産か「みなし相続財産」として相続税の対象となる受給権者固有の権利であり、遺産ではない

遺族年金について

遺族年金には、「遺族基礎年金」と「遺族厚生年金」の2種類があります。

  • 遺族基礎年金:国民年金に加入していた方が亡くなった場合に、条件を満たすお子さんがいる妻や子に支給されます。
  • 遺族厚生年金:厚生年金に加入していた方が亡くなった場合に、遺族基礎年金に上乗せして支給されます。こちらは、お子さんがいなくても配偶者などが受け取れる場合があります。

遺族年金は、ご主人が亡くなった後の生活を支えるための、国からの大切な制度です。基本的には非課税で受け取れるので、生活設計を考える上で非常に重要な要素となります。

まとめ

  • 死亡退職金:会社から支払われ、相続税の「非課税枠(500万円 × 法定相続人の数)」があります。非課税枠を超えた部分は相続税の対象になります。
  • 遺族年金:国から支給され、原則として税金はかかりません。死亡退職金とは全く別のものです。

相続に関するお悩みは、
私たちにご相談ください。

電話でのお問い合わせ

フリーダイヤル

0120-453-940

受付時間 10:00〜18:00

※土日祝日は時間帯や状況によって、後日での折り返し対応となる場合があります。

メールでのお問い合わせ

24時間受付

※ご返信まで数日かかる場合があります。

配偶者が亡くなったら最初にするべきことリスト

亡くなった直後から葬儀、相続手続きまでの具体的なリストと注意点 まずは全体像を把握できるよう、亡くなった直後から相続手続き完了までの流れを大きく3つのフェーズに分けてご説明します。 それぞれのフェーズでやるべきことと注意点を詳しく見ていきましょう。 フェーズ1:逝去直後~葬儀前日:臨終から葬儀の準備まで この時期は、悲しみの中でも冷静に、しかし迅速に対応が求められることが多いです。 【やるべきこと

Read More »

配偶者の遺産分割協議:円満に進めるためのヒント

円満な遺産分割協議のための心構え  一番大切なのは「お互いを尊重する気持ち」です。 コミュニケーションのポイント  具体的な話し合いの進め方についてです。 専門家への相談時期 「こんなことで専門家に相談していいのかな?」と迷うこともあるかもしれませんね。しかし、困った時は遠慮なく専門家を頼るのが、円満な解決への近道です。 【具体的な相談先】 困った時に適切な専門家へ相談することで、精神的な負担も軽

Read More »

配偶者が外国人でも相続は可能?国際相続の基礎知識

外国籍の方が日本で亡くなられた場合、相続の手続きは「どこの国の法律が適用されるか」という点がポイントになります。これを「準拠法(じゅんきょほう)」と言います。 1.どの国の法律が適用されるの?(準拠法の決定) 相続手続きを始める前に、まず「どの国の法律に基づいて相続を進めるのか」を決めなければなりません。これは、亡くなられた方(被相続人)が「どの国に一番関係が深かったか」によって決まります。 【こ

Read More »

配偶者が再婚したら相続はどうなる?

再婚した場合の相続権の変化と相続順位への影響 まず相続人が誰になるか、そしてその順位がどうなるかをご説明します。 遺言書による対策 再婚家庭では、相続人が複雑になることが多いので、遺言書を作成することが非常に重要になります。遺言書があれば、ご自身の意思に基づいて、誰にどの財産をどれだけ渡すかを明確にすることができます。 【遺言書でできること】 【遺言書作成のポイント】 相続税対策について 再婚によ

Read More »

「寄与分」を主張する!配偶者の貢献を相続に反映させるには

寄与分とは? まず、寄与分とは何か、からお話ししましょう。 相続は、亡くなった方(「被相続人」といいます)の財産を、法律で定められた「法定相続人」が分け合うのが基本です。でも、もし相続人の中に、被相続人の財産が増えたり、減るのを防いだりするために、特別な貢献をした方がいたらどうでしょう? その方が、他の相続人と同じ割合でしか財産をもらえないとしたら、なんだか不公平に感じますよね。 そこで、民法には

Read More »

配偶者が受け取る「みなし相続財産」とは?

みなし相続財産って何?〜普通の相続財産と何が違うの?〜 まず、相続財産って聞くと、ご主人の残された預貯金や不動産、車なんかを思い浮かべますよね?これらは「本来の相続財産」と言って、ご主人が生きていたときに持っていた財産のことです。 それに対して、「みなし相続財産」というのは、ご主人が亡くなられたからこそ受け取れる財産のことなんです。生きていた時にはご主人の財産ではなかったけれど、相続税を計算する上

Read More »

相続税の節税に失敗しないための専門家選び

1. 税理士を選ぶ際のポイント 相続税の申告は年に何度もやるようなものではありませんから、専門的な知識や経験がとても大切になります。 ① 相続税に強い税理士かどうかを確認する ② 相性やコミュニケーション能力 ③ 料金体系が明確か 2. 相続税対策にかかる費用 税理士さんに支払う費用は、主に「相続税申告の報酬」です。これは、相続財産の総額によって変わってくるのが一般的です。 【費用の相場】 相続財

Read More »

相続税の計算で間違いやすいポイントとは?

1. 相続税の計算でよくある間違い 相続税の計算はただ足し算や引き算をするだけではありません。専門的な知識が必要となる場面がたくさんあります。特に間違えやすいポイントは、大きく3つあります。 1.1 財産の評価を間違えてしまう 相続税は、故人様が残された財産(遺産)の合計額を基に計算します。この「財産」には、預貯金や株などの他に、不動産(土地や建物)も含まれます。 1.2 控除や特例を使い忘れてし

Read More »

相続税対策としての法人活用術

1. 会社設立による相続税対策って、どういうこと? 「会社を設立する」と聞くとなんだか大それたことのように感じるかもしれませんが、相続対策として会社を作るというのはご自身の財産の一部をその会社に移したり会社を通じて事業を行ったりすることで、相続税の評価額を下げる方法です。 例えば、今個人で持っている不動産や事業を新しく作った会社(法人)に移すことで次のようなメリットが生まれます。 2. 法人所有の

Read More »

未公開株式の相続税評価と対策

非上場会社の株式の相続税評価方法 非上場会社の株式の相続税評価は、上場している会社の株と違って、日々株価が変動する市場がないため、会社の実態に合わせて評価額を計算する必要があります。評価方法は主に以下の3つがあり、会社の規模や状況によって使い分けられます。 どの評価方法を使うかは、会社の規模によって決まります。 会社の従業員数や総資産額などによって「大会社」「中会社」「小会社」に分類され、それぞれ

Read More »

相続税で損しないための不動産評価のポイント

不動産の相続税評価って? 相続が発生した時に、故人さまが持っていた不動産も相続財産として数えられます。そして、その不動産にどれくらいの価値があるのかを計算するのが「相続税評価」です。この評価額に基づいて、相続税が計算されます。 「でも不動産の値段って、売りに出す時と相続の時で違うの?」と思われるかもしれませんが、相続税を計算するための評価額は、実際に売買される価格とは異なる独自のルールで計算されま

Read More »

相続税の税務調査とは?準備と対策のポイント

相続税の税務調査ってどんな時に来るの? まず、「どんな時に税務調査が来るの?」という疑問、当然ですよね。相続税の税務調査はすべてのご家庭で行われるわけではありません。税務署は、申告された内容や、過去の申告情報などから、「もしかしたら申告漏れがあるかもしれない」と判断した場合に調査に入ることが多いです。 具体的には、以下のようなケースで調査が行われやすいと言われています。 相続税の申告があったうち、

Read More »
上部へスクロール