相続税がかかる財産、かからない財産を徹底解説

相続税って何?

まず、相続税とは、亡くなった方(「被相続人」といいます)から、ご家族や親族の方々(「相続人」といいます)が財産を受け継いだときに、その財産の金額に応じてかかる税金のことです。

「もらったものに税金がかかるの?」と思われるかもしれませんが、これは日本の税制の一つなんです。ただ、すべての財産に税金がかかるわけではありませんし、一定の金額までは税金がかからない「非課税枠」というものもあります。

相続税の課税対象となる財産とは?

相続税がかかる「課税対象」となる財産は、基本的には金銭に換算できるすべての財産です。具体的には以下のようなものが挙げられます。

1. 本来の相続財産

被相続人の方が亡くなった時点で持っていた財産です。

  • 現金、預貯金:タンス預金も銀行預金もすべて対象です。
  • 土地、建物:ご自宅や賃貸用のマンション、田畑なども含まれます。
  • 株式、公社債などの有価証券:証券会社に預けている株や債券などです。
  • 貴金属、自動車、書画骨董:高価な宝石や絵画、コレクション品なども対象になります。
  • 貸付金、特許権、著作権:誰かにお金を貸していて返してもらう権利や、特許や著作権といった目に見えない財産も含まれます。
  • ゴルフ会員権:これも金銭的価値のある財産とみなされます。

2. みなし相続財産

被相続人の方が亡くなったことによって、初めて相続人が受け取ることになる財産で、相続によって取得したと「みなされる」ものです。これらは「死亡保険金」「死亡退職金」が代表的です。

  • 生命保険金:亡くなった方が契約していた生命保険の死亡保険金です。
  • 死亡退職金:亡くなった方が会社などから受け取るはずだった退職金です。

【ポイント!】 生命保険金や死亡退職金には、それぞれ「非課税枠」という特別な仕組みがあります。これは、「500万円 × 法定相続人の数」という計算式で算出され、この金額までは相続税がかからないんです。

例えば、ご主人が亡くなられて、奥様と子供2人が相続人の場合(法定相続人3人)なら、

500万円×3人=1,500万円

となりますので、生命保険金や死亡退職金がそれぞれ1,500万円までは相続税がかかりません。これは、残されたご家族の生活を保障するための配慮と考えられています。

3. 生前贈与された財産(相続時精算課税制度を利用したもの)

亡くなる前にもらった財産でも、相続税の課税対象になる場合があります。特に、「相続時精算課税制度」という制度を利用して生前に贈与された財産は、贈与の時の評価額で相続財産に加算して相続税を計算します。

相続税の非課税となる財産とは?

一方で、相続税がかからない「非課税」となる財産もあります。これらは、国民感情や社会的な慣習などを考慮して定められています。

1. 墓地、墓石、仏壇、仏具、神棚など日常礼拝に使用するもの

ご先祖様を供養するためのものは、基本的に相続税がかかりません。

  • 墓地、墓石、霊廟(れいびょう):お墓そのものや、お墓が建っている土地なども含まれます。
  • 仏壇、仏具、仏像、位牌:ご自宅にある仏壇や、お線香立て、おリンなどの仏具、ご本尊や位牌などです。
  • 神棚、神体、神具:神棚や神様を祀る道具なども対象です。

【ポイント!】 ただし、骨董品としての価値があるような高価なものや、投資目的で所有していると判断されるような純金製の仏像などは、課税対象になる場合があります。「日常礼拝」に使うためのものかどうかが判断基準になります。

2. 国や地方公共団体、特定の公益法人などに寄付した財産

相続した財産を、国や地方公共団体、または特定の公益を目的とする事業を行う法人などに寄付した場合、その寄付した財産は相続税の対象から外れます。これは、公益活動を促進するための優遇措置です。

3. 一定の障害者の方に贈与された特定信託の財産

特定の要件を満たす障害者の方のために設定された信託(特定信託)の財産も、一定の金額まで非課税となる場合があります。

相続税の課税対象かどうかの判断基準

相続税がかかるかどうかは、主に以下の2つの基準で判断されます。

1. 遺産の総額が「基礎控除」を超えるかどうか

相続税には、「基礎控除」という非課税枠が設けられています。相続財産の総額がこの基礎控除額以下であれば、相続税はかかりませんし、原則として相続税の申告も不要です。

基礎控除額の計算式は次の通りです。

基礎控除額 =3,000万円+(600万円×法定相続人の数)

例えば、ご主人が亡くなられて、奥様と子供2人が相続人の場合(法定相続人3人)なら、

3,000万円+(600万円×3人)=3,000万円+1,800万円=4,800万円

となります。この場合、相続財産の合計額が4,800万円以下であれば、相続税はかかりません。

【注意点!】 「みなし相続財産」のところでご説明した生命保険金や死亡退職金の非課税枠は、この基礎控除とは別に設けられている非課税枠です。それぞれの非課税枠を最大限活用することで、相続税を抑えることができます。

2. 財産が「金銭的価値があるか」「換金性があるか」

基本的には、金銭に見積もることができるすべての財産が課税対象となります。特に判断が難しいものについては、「売却してお金に換えられるか(換金性があるか)」が重要な判断基準となります。

例えば、一般的な仏壇や仏具は日常礼拝に使うものであり、通常は換金性が低いと判断されるため非課税です。しかし、純金でできている仏壇など、明らかに高額で容易に売却できるようなものは、換金性があるとみなされ、課税対象となる可能性があります。

まとめ

相続税は、金銭に見積もることができる財産にかかる税金ですが、以下のような非課税となる財産や、基礎控除などの非課税枠があります。

【課税対象となる主な財産】

  • 現金、預貯金
  • 土地、建物
  • 株式、債券などの有価証券
  • 自動車、貴金属、骨董品、ゴルフ会員権
  • 生命保険金(非課税枠を超える部分)
  • 死亡退職金(非課税枠を超える部分)
  • 相続時精算課税制度を利用した生前贈与財産

【非課税となる主な財産】

  • 墓地、墓石、仏壇、仏具、神棚など日常礼拝に使用するもの(ただし、高額な骨董品や投資目的のものは除く)
  • 国や地方公共団体、特定の公益法人に寄付した財産
  • 生命保険金や死亡退職金の非課税枠(500万円 × 法定相続人の数)

相続税は、個々の状況によって計算方法や適用される特例などが異なります。ご自身のケースで不安な点があれば、相続に詳しい税理士や専門家に相談されることをお勧めします。

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