甥や姪が事業を引き継ぐ場合の相続対策

甥や姪が事業承継する場合の相続税対策:分かりやすく解説!

まず、甥や姪の方が事業を承継される場合、お子さんや配偶者が承継する場合とは少し異なる点があります。相続税の計算上、「法定相続人」ではないため、いくつか注意が必要になります。

1. 事業承継税制の利用について

事業承継税制は、会社の事業を後継者に引き継ぐ際に、相続税や贈与税の納税を猶予・免除してくれる、とってもありがたい制度です。ただ、いくつかクリアしなければならない条件があります。

甥や姪が事業承継税制を利用できる?

原則として、事業承継税制は、会社の株式や事業用資産を「親族」が承継する場合に適用されます。ここでいう「親族」には、お子さんや孫、配偶者だけでなく、甥や姪も含まれます

利用するための主な条件

  • 後継者の要件: 承継する甥や姪の方が、会社の経営に一定期間関わっていることや、代表者として就任することなどが求められます。
  • 会社の要件: 会社が一定の規模以下であることや、事業内容が限定されていることなどがあります。
  • 資産の要件: 承継する資産が、事業に実際に使われている株式や土地、建物であることなどが必要です。

どうして相続税が安くなるの?

この制度を利用すると、相続した株式などの評価額にかかる相続税の納税が猶予されます。そして、もし承継した甥や姪の方が、さらに次の世代に事業を引き継ぐなど、一定の条件を満たせば、猶予されていた相続税が免除されることもあるんです。これは、事業を長く続けていくための国の支援策と考えてください。

注意点!

  • 制度を利用するには、事前に税務署に申請書を提出したり、経営計画書を作成したりと、手続きが少し複雑です。
  • 猶予期間中に会社の経営状況が悪化したり、株式を売却したりすると、猶予されていた相続税を支払わなければならなくなる場合があります。

2. 遺言書による対策

遺言書は、ご自身の財産を「誰に」「何を」相続させるかを明確に意思表示できる、とても重要な書類です。甥や姪の方に事業を承継させたい場合、特に遺言書を作成しておくことが大切になります。

なぜ遺言書が必要なの?

  • 意思の明確化: 遺言書がない場合、法定相続人(配偶者やお子さんなど)が財産を相続するのが原則です。甥や姪は法定相続人ではありませんので、遺言書がないと、事業用資産を甥や姪に引き継がせるのが難しくなってしまいます。
  • 相続トラブルの回避: 遺言書があれば、「この会社は甥(姪)に継がせたい」というあなたの意思がはっきりと伝わります。これにより、他の相続人との間でのトラブルを防ぎ、スムーズに事業承継を進めることができます。
  • 財産配分の指定: 会社だけでなく、他の財産(自宅や預貯金など)についても、誰に何を相続させるかを具体的に指定できます。

遺言書の種類(代表的なもの)

  • 自筆証書遺言: ご自身で全文、日付、氏名を書いて押印するものです。手軽に作成できますが、形式不備で無効になったり、紛失の恐れもあります。
  • 公正証書遺言: 公証役場で公証人の立ち会いのもと作成するものです。費用はかかりますが、法律の専門家が関与するため、無効になるリスクが低く、原本が公証役場に保管されるため安心です。

遺言書に記載すべきこと

  • 「〇〇株式会社の株式△△株は、甥の〇〇に相続させる。」
  • 「事業に使用している土地および建物は、甥の〇〇に相続させる。」
  • もし、他の相続人にも相続させたい財産があれば、それらについても具体的に記載します。

3. その他の相続税対策(甥や姪が対象の場合)

事業承継税制や遺言書と合わせて、他にもできる対策があります。

  • 生前贈与の活用:
    • もし、事業用資産の一部を少しずつ甥や姪に贈与できるのであれば、贈与税の非課税枠(年間110万円)を活用して贈与する方法があります。この枠内であれば、贈与税はかかりません。
    • また、事業承継税制には、贈与税の納税猶予・免除の制度もありますので、専門家と相談して活用を検討するのも良いでしょう。
    • ただし、生前贈与は、贈与の時期や金額によっては、相続開始前3年(将来的に7年)以内の贈与は相続財産に加算される「相続時精算課税制度」の対象となる場合がありますので注意が必要です。
  • 生命保険の活用:
    • 被相続人(亡くなる方)を契約者・被保険者とし、甥や姪を保険金受取人とする生命保険に加入する方法です。
    • 生命保険金は、一定の非課税枠(「500万円 × 法定相続人の数」)があります。ただし、甥や姪は法定相続人ではないため、この非課税枠は適用されません
    • しかし、生命保険金は、受取人固有の財産とみなされ、遺産分割協議の対象外となるため、他の相続人との争いを避けて、確実に甥や姪に資金を残すことができます。相続税はかかりますが、納税資金として活用できます。
    • また、死亡退職金という形で、甥や姪に会社から資金を支払うことも検討できます。
  • 医療保険について:
    • 医療保険は、ご自身の医療費の備えとして加入するものですので、直接的な相続税対策とは少し異なります。
    • しかし、医療費の心配が減ることで、安心して事業の承継準備に専念できるという間接的なメリットはあるかもしれません。

まとめ

甥や姪の方が事業を承継される場合、

  1. 事業承継税制の活用を第一に検討しましょう。
  2. ご自身の「会社を甥(姪)に継がせたい」という明確な意思を反映させるために、遺言書を必ず作成しましょう。
  3. 生前贈与や生命保険の活用も、合わせて検討することで、より効果的な相続税対策ができます。

これらの対策は、それぞれに専門的な知識が必要となります。税理士さんや弁護士さん、あるいは相続に強いファイナンシャルプランナーさんなど、専門家の方に相談しながら進めるのが一番安心です。

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