遺言書で寄付をしたい!社会貢献と相続の関係

遺言書で寄付をする方法:遺贈寄付について

遺言書で寄付を行うことを「遺贈寄付(いぞうきふ)」といいます。

ご自身の死後、遺言書に書かれた通りに財産を特定の団体(NPO法人、公益法人、学校法人、社会福祉法人など)に贈るという方法です。

1. 遺言書の書き方:必ず「遺言書」に書くこと

口約束やメモ書きでは効力がありません。必ず、法律で定められた形式に則った「遺言書」を作成する必要があります。

遺言書には、以下の内容を明確に記載します。

  • 誰に寄付するか:寄付先の団体名を正式名称で正確に書きます。例えば、「○○市に寄付する」ではなく、「○○市に○○として寄付する」のように具体的に書きます。
  • 何を寄付するか:現金、不動産、株式など、寄付する財産を特定します。
  • いくら寄付するか:金額を具体的に記載します。
  • 寄付の目的:もし特定の目的がある場合は、その旨を記載します。

【遺言書の例】

遺言書

遺言者 山田花子

遺言者は、その所有する下記財産を、以下のとおり遺贈する。

第一条 遺言者の有する現金300万円を、社会福祉法人○○に遺贈する。

第二条 本遺言の執行者として、〇〇を指名する。

令和○○年○○月○○日

住所 東京都○○区○○

氏名 山田 花子  ㊞

※遺言書の形式には、ご自身で書く「自筆証書遺言」と公証役場で作成する「公正証書遺言」があります。専門家として間違いのない「公正証書遺言」をおすすめします。

2. 税制上の優遇措置:相続税がかからない

遺贈寄付の一番のメリットは税金面での優遇です。

財産を相続する際には「相続税」という税金がかかります。しかし、国や地方公共団体、特定の公益法人などに寄付をした財産には相続税が非課税になります。

寄付した分だけ相続財産が減るので、ご自身の相続人(お子さんなど)が支払う相続税の負担を軽くすることができます。

これは、国が「社会貢献につながる寄付は積極的に応援しますよ」というメッセージです。

3. 寄付をする際の注意点:必ず確認しておきたいこと

遺言書で寄付をする際にはいくつか注意点があります。

① 遺留分を侵害しないように

「遺留分」とは、法定相続人(配偶者や子、親など)に最低限保障された相続できる財産の割合のことです。

例えば、お子さんがいらっしゃる場合、全財産を寄付してしまうとお子さんの遺留分を侵害してしまいます。その場合、お子さんから「遺留分侵害額請求」という訴えを起こされトラブルになる可能性があります。

寄付をする際は、ご自身の財産の全体像を把握し、遺留分を考慮した上で無理のない範囲で行うことが大切です。

② 寄付先の団体は「税制優遇の対象か」を確認

寄付先の団体が、相続税の非課税措置を受けられるかどうかは事前に確認が必要です。

  • 国や地方公共団体:必ず非課税
  • 特定の公益法人など:国税庁が定めた要件を満たす必要あり

寄付を検討している団体に直接問い合わせて「遺贈寄付の場合、相続税は非課税になりますか?」と聞いてみると良いでしょう。

③ 遺言執行者を指定する

遺言書を作成したらその内容を正確に実行してくれる「遺言執行者」を指定しておくことを強くお勧めします。

遺言執行者は、寄付の手続きや相続人への説明など、遺言の内容を実現するための様々な手続きを行います。

ご家族に依頼することもできますが、専門的な知識が必要となるため弁護士や司法書士といった専門家に依頼する方がスムーズです。

まとめ:遺贈寄付は社会貢献と相続対策の両立

遺言書による寄付(遺贈寄付)はご自身の想いを社会に役立てる素晴らしい方法です。

  • ご自身の意思で、財産を有効活用できる
  • 寄付した分は相続税がかからない
  • 残されたご家族の相続税負担を軽くできる

ただし、ご家族とのトラブルを防ぐためにも、遺留分や遺言執行者のことなど、事前にしっかり検討することが大切です。

お一人で悩まずにまずは相続の専門家や遺贈寄付に詳しい団体に相談してみるのが一番の近道です。

もし何かご不明な点がありましたらいつでもご相談ください。

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私たちにご相談ください。

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