遺言書は、ご自身の財産を「誰に」「どれだけ」渡したいかを明確にするための大切な書類です。しかし、せっかく作成しても、書き方に間違いがあったり、内容が曖昧だったりすると、かえってご家族が揉めてしまう原因になってしまうことがあります。
遺言書作成で避けるべき「うっかりミス」
遺言書には、法律で定められた形式(様式)があります。この形式を守らないと、遺言書自体が無効になってしまうので、注意が必要です。特に、ご自身で書く自筆証書遺言の場合、次の3つのポイントをしっかり守ってください。
- 全文を自筆で書くこと: パソコンで作成したり他人に代筆を頼んだりした部分は無効です。財産目録(財産の一覧表)だけはパソコンで作成しても大丈夫ですが、その場合は目録のすべてのページに署名・押印が必要です。
- 日付を正確に書くこと: 「令和○年○月吉日」といった書き方は無効です。「令和○年○月○日」と、日付を正確に記載しましょう。
- 署名と押印を忘れないこと: 必ずご本人の署名と認印で構いませんので押印をしてください。
家族が困らない!「曖昧な表現」を避ける方法
遺言書で一番大切なのは誰が読んでも誤解の余地がないように具体的に書くことです。
以下のような表現は後々トラブルの原因になりやすいので注意してください。
- 例1:「長男に家を継がせる」
- なぜダメ?: 「家」とは土地や建物、家財道具など、どこまでを指すのかが曖昧です。また、「継がせる」という言葉も法的な効力がはっきりしません。
- どう書く?: 「長男である山田太郎に、〇〇市〇〇町〇丁目〇番地所在の土地、およびその上の建物を相続させる。」のように、土地と建物の登記簿上の情報を正確に書くことが大切です。
- 例2:「妻に生活に困らないだけの財産を渡す」
- なぜダメ?: 「生活に困らないだけの財産」という表現では、具体的にいくらの現金や、どの不動産を指すのかが不明確です。
- どう書く?: 「妻である山田花子に、預金口座(〇〇銀行〇〇支店、口座番号〇〇)の全額を相続させる。」や、「現金1,000万円を遺贈する。」のように、金額や金融機関、口座番号まで具体的に指定します。
- 例3:「娘たちに財産を平等に分ける」
- なぜダメ?: 財産には、現金、不動産、株など様々な種類があります。これらの財産を「平等に」分けるのは難しく、遺産分割で揉める原因になりがちです。
- どう書く?: 「長女である山田さくらに現金500万円を、次女である山田もみじに現金500万円を相続させる。」のように、誰に、どの財産を、どのくらい渡すかを明確に記します。
遺言書に書いておきたい「ご家族への配慮」
遺言書は、単に財産を分けるためだけのものではありません。残されたご家族への最後のメッセージとしても大切な役割を果たします。次のことを盛り込むことでご家族の心も穏やかになるでしょう。
- 遺言書を作成した理由: なぜこの遺言書を書いたのか、その理由を書き添えることでご家族はあなたの気持ちを理解しやすくなります。「ご家族が揉めないように、心を込めて作成しました」といった一文があるだけでもずいぶん印象が変わります。
- 感謝のメッセージ: 「今までありがとう」「家族としてあなたたちと過ごせて幸せでした」といった感謝の気持ちを伝えることで遺されたご家族にとってかけがえのない宝物になります。
- 遺言執行者の指定: 遺言書の内容を確実に実行してくれる人を遺言執行者として指定しておくと、相続手続きがスムーズに進みます。ご家族を執行者に指定することもできますし、弁護士や司法書士といった専門家に依頼することも可能です。
遺言書は、ご自身の想いを形にするための大切な手段です。もし「書き方がわからない」「これで大丈夫かな」と不安に思われたら、いつでもご相談ください。専門家として、ご家族が笑顔でいられるような遺言書作成をサポートさせていただきます。