1. 相続税の計算でよくある間違い
相続税の計算はただ足し算や引き算をするだけではありません。専門的な知識が必要となる場面がたくさんあります。特に間違えやすいポイントは、大きく3つあります。
1.1 財産の評価を間違えてしまう
相続税は、故人様が残された財産(遺産)の合計額を基に計算します。この「財産」には、預貯金や株などの他に、不動産(土地や建物)も含まれます。
- 土地の評価が難しい! 土地の評価は、路線価や倍率といった国が定めた基準に沿って計算します。しかし、土地の形がいびつだったり、周りの土地との関係で使い勝手が悪かったりすると評価額を安くできる場合があります。こういった「減額」できる要因を見落としてしまうと本来よりも高い相続税を払うことになってしまいます。
- 名義預金に要注意! 亡くなった方の配偶者やお子様の名義になっている預金でも、そのお金を貯めたのが故人様である場合、それは故人様の財産とみなされることがあります。これを「名義預金」といいます。 「これは私のお金だから」とご家族の口座に入っているお金を相続財産に含めずに申告すると、後から税務署に「申告漏れ」を指摘されてしまうことがあります。
1.2 控除や特例を使い忘れてしまう
相続税には、税金を安くするための様々な制度(控除や特例)があります。 これらを適用できるのに知らずに申告してしまい、税金を払いすぎてしまうケースがよく見られます。
- 配偶者控除 亡くなった方の配偶者が相続した場合、1億6,000万円、または配偶者の法定相続分相当額までは相続税がかからない、というとても大きな制度です。
- 小規模宅地等の特例 故人様が住んでいた土地を配偶者やお子様が相続した場合、一定の要件を満たせばその土地の評価額が最大80%も減額される特例です。
これらの特例は適用するための条件が細かく決められています。特に、申告期限内に申告することが条件となっているものがほとんどです。もし期限を過ぎてしまうと本来使えるはずの特例が使えなくなり相続税が跳ね上がってしまうことがあります。
1.3 申告を忘れてしまう
「うちは財産なんてそんなにないから、相続税はかからないだろう」と考えて、申告自体を忘れてしまう方もいらっしゃいます。 しかし、後から税務署の調査で財産の申告漏れが発覚すると、本来納めるべき税金に加えて、ペナルティとして無申告加算税や延滞税が課されてしまいます。
2. 特に注意すべき項目
相続税の計算で、特に注意していただきたいのは、やはり申告の期限と財産の見落としです。
- 申告・納付期限は10ヶ月! 相続税の申告と納税の期限は、故人様が亡くなられたことを知った日の翌日から10ヶ月以内です。葬儀や四十九日法要を終えると、あっという間に時間が過ぎてしまいます。 この期間内に、遺産の分け方について話し合い(遺産分割協議)をまとめ、申告・納税まで行わなければなりません。
- 税務署は意外とよく見ている! 税務署は、故人様の過去の預金口座の動き、保険金の受取状況、不動産の購入履歴などをしっかり把握しています。 「この預金は税務署にはバレないだろう」と安易に考えて申告をしないと後々大きなペナルティに繋がってしまいます。
3. 専門家への相談の重要性
相続税の計算は、ご自身でされるには非常に難しく、先ほどご説明したような間違いや見落としが起こりがちです。 そこで専門家である税理士にご相談いただくことを強くお勧めします。
3.1 払いすぎを防ぎ、節税できる
相続に詳しい税理士は、財産の評価方法を熟知しています。特に土地の評価など、専門的な知識と経験があれば、評価額を適正に引き下げられる可能性があります。また、適用できる特例や控除を漏れなく適用することで払いすぎる税金を防ぐことができます。
3.2 複雑な手続きを任せられる
相続税の申告書は、専門用語も多く、作成には手間と時間がかかります。税理士に依頼すれば、ご家族は故人様を偲ぶ時間や残された手続きに集中できます。 もし、申告後に税務調査が入った場合でも税理士が窓口となって対応してくれますので安心です。
3.3 予期せぬトラブルを回避できる
遺産分割協議がまとまらないまま申告期限を迎えてしまうと大きな特例が使えなくなり多額の相続税を支払うことになってしまいます。 専門家にご相談いただければ、遺産の分け方についても、税金の観点から適切なアドバイスができます。
まとめますと、相続税の計算は一見簡単そうに見えても多くの落とし穴が潜んでいます。ご自身で対応するのも一つの方法ですが、後々のリスクを考えると早い段階で専門家にご相談いただくのが一番安心で確実な方法と言えます。