甥や姪に財産を遺す際の法改正の注意点

甥や姪への相続に影響を与える法改正の最新情報

まず、甥や姪の方が相続人になるケースは、原則として「代襲相続(だいしゅうそうぞく)」の場合に限られます。

1. 甥や姪が相続人になるケースとは?

日本の民法では、相続人になれる人の順位が決まっています。

  • 第1順位:お子さん(お子さんが亡くなっている場合は、お孫さんやひ孫さん)
  • 第2順位:ご両親や祖父母などの直系尊属(ちょっけいそんぞく)
  • 第3順位:ご兄弟姉妹

このいずれもいらっしゃらない場合に、ようやくご兄弟姉妹が相続人になります。そして、そのご兄弟姉妹がすでに亡くなっている場合に、そのお子さんである甥や姪が、亡くなったご兄弟姉妹の代わりに相続人となるのが「代襲相続」です。

2. 法改正による「特別寄与料」の新設

平成30年(2018年)の民法改正で、「特別寄与料(とくべつきよりょう)」という制度が新設されました。これは、甥や姪の方々にも関係してくる可能性があります。

これまでは、例えば、嫁や婿、甥や姪といった方が、亡くなった方の介護や看病にとても貢献しても、基本的には相続人ではないため、金銭的に報われることがありませんでした。しかし、この法改正によって、介護や看病などに貢献した「特別寄与者」として、相続人に対して「特別寄与料」を請求できるようになりました。

もし、あなたが亡くなった後に、特定の甥や姪の方が献身的に介護してくれた、などという場合は、この「特別寄与料」という形で、その貢献に報いることができるようになった、と考えると良いでしょう。

3. 甥や姪への相続・遺贈に関するその他の注意点

  • 甥や姪には「遺留分(いりゅうぶん)」がない 遺留分とは、一定の相続人に認められた、最低限の遺産の取り分のことです。配偶者や子、親には遺留分がありますが、兄弟姉妹には遺留分がありません。そのため、兄弟姉妹が代襲相続して甥や姪が相続人になった場合でも、甥や姪には遺留分が認められません。 これは、遺言書で「甥や姪には一切財産を渡さない」という内容にした場合、甥や姪は遺留分を主張できない、という意味になります。
  • 甥や姪の子には「再代襲(さいだいしゅう)」がない 代襲相続は、お子さんや孫(直系卑属)の場合は下の代へどこまでも続きますが、甥や姪の場合は、そのお子さん(甥や姪から見た孫)への「再代襲」は認められていません。つまり、甥や姪が亡くなっていたとしても、そのお子さんがさらに代襲相続することはありません。
  • 相続税の「2割加算」に注意 甥や姪の方が相続や遺贈(遺言によって財産を受け取ること)を受けた場合、相続税が2割加算されます。 これは、亡くなった方の配偶者や子、親以外の方が財産を承継する場合に適用されるルールです。もし、甥や姪に財産を渡すことを考えている場合は、この2割加算があることを考慮に入れておく必要があります。

遺言書の見直し時期

遺言書は一度作成したら終わり、というものではありません。あなたの状況や気持ちが変われば、それに合わせて見直すことが大切です。特に、甥や姪への相続を考えている場合は、以下のタイミングで遺言書を見直すことをおすすめします。

  1. ご自身の気持ちに変化があった時
    • 特定の甥や姪に財産を渡したい、または渡したくなくなった、など、お気持ちに変化があった場合は見直しましょう。
  2. ご家族の状況に変化があった時
    • ご自身の結婚・離婚、お子さんの誕生や結婚、またはご兄弟姉妹や甥・姪の状況(結婚、出産、死亡など)に変化があった時。
    • 特に、代襲相続の対象となるご兄弟姉妹や甥・姪の状況が変わった場合は、遺言書の内容に影響が出ることがあります。
  3. 財産状況に変化があった時
    • 財産が増えたり減ったりした時、または大きな不動産を売却・購入した時など。
    • 特に、特定の財産を特定の甥や姪に渡す旨を記載している場合、その財産の状況が変われば、遺言書を見直す必要があります。
  4. 法改正があった時
    • 今回ご説明した「特別寄与料」のように、相続に関する法律が変わった場合は、ご自身の遺言書が最新の法律に沿っているか、または意図通りの効果が得られるかを確認するために、見直しを検討しましょう。

ポイントは、「今の遺言書の内容で、本当にあなたの想いが実現できるのか」という視点で見直すことです。

生命保険・医療保険と相続

生命保険は、契約内容によって、受取人を自由に指定できます。もし、特定の甥や姪に財産を残したいと考えているけれど、遺言書を作るのが難しい、または確実にその方に渡したい、という場合は、生命保険の受取人を甥や姪に指定するという方法もあります。

  • 生命保険の活用:生命保険金は、原則として受取人固有の財産とされ、遺産分割の対象にはなりません。そのため、他の相続人の遺留分を気にせずに、特定の甥や姪に確実に財産を渡したい場合に有効な手段となり得ます。ただし、相続税の対象にはなる場合がありますので、税理士さんと相談されるのが良いでしょう。また、生命保険金には「非課税枠」(500万円 × 法定相続人の数)がありますが、甥や姪を受取人にした場合は、この非課税枠の計算に含められない場合があるので注意が必要です。

医療保険は、ご自身の医療費をカバーするためのもので、直接的な相続財産とは関係ありませんが、ご自身が健康でいることが、残されたご家族、そして甥や姪の方々への負担を減らすことにも繋がります。

まとめ

甥や姪の方々への相続は、一般的なお子さんへの相続とは異なる点が多く、特に「代襲相続」や「2割加算」などの注意点があります。

もし、特定の甥や姪に財産を渡したいというお気持ちがあるのであれば、ぜひ遺言書を作成することをお勧めします。遺言書があれば、あなたの希望通りの財産の分け方を指定することができます。

「特別寄与料」の制度もできましたので、もし介護などで貢献してくれた甥や姪の方がいらっしゃる場合は、そういった形で報いることも視野に入れられます。

ご自身の状況に合わせて、専門家(弁護士や税理士、司法書士など)に相談しながら、最適な方法を見つけていくのが一番安心です。

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